秀808の平凡日誌

第12話 迷い(前編)

第12話 迷い(前編)

「オラァァァァァァァ!!!!死ねよっ!!」

 ラベルが狂喜に満ちた表情で、愛鎌『ブラッディサイス』の下の部分に鎖でつながれた刺鉄球をラムサスに投げてくる。

 ラムサスは紙一重でそれをかわすが、鉄球の直撃をうけた建物の壁がいとも簡単に粉砕される様子をみて、ラムサスは息を呑んだ。

(長期戦になって疲れれば、勝ち目は無い)

 ラムサスが狙ったのは、短期決戦。

 疲れがでて、動きが鈍くなる事は即『死』に値する。

 そうなる前に決着をつけなければならない。

 ラムサスは鉄球を投げた後の隙を狙い、手にもっている『マウンテンクライマー』に魔力を集結させ、ラベルに突っ込んだ。

「・・・俺達の町、これ以上壊させてたまるか!!」

 そしてそのまま一気に近づき、胴体に『チリングタッチ』を食らわせる。

 ラベルの体はふっとび、少しはなれた地面に体制を直して着地した。

「てめぇ・・・1度ならず2度までも俺に攻撃を・・・ぶっ殺してやるよ!」

 ラムサスは『フォーベガーチャージング』を行いながら、

「・・・お前達こそ、人間でなぜここを襲う?戦う理由など、無いはずだ!」

 ラベルは『ブラッディサイス』を握り締めながら、侮蔑をこめた口調で言った。

「・・・そんなの知らないね!ただ楽しいから、言われたから壊すだけだ!」
   
 ―・・・言われた?―

 その言葉に疑問を感じながらも、ラムサスははっきりとした口調で言い放った。

「・・・今まで人間だから手加減しておいたが、今度は本気で相手してやる・・・きな!」




 レーシェルは、東門の攻撃に加わっていた。

 その巨大な砲身『デヴァイス・ブレイス』の1射を放つたびに、敵が、物が壊れていくのが快感だったからだ。

 誰もが、自分を見、恐れ、逃げ出し、そして死ぬ。

 それが、レーシェルは好きだった。

 力の無い虫供が、数で攻めてきてもそれを一気にひねりつぶす。

 ・・・まさに最高だった。これ以上、何を望む?

 そんなレージェルを、少しはなれたところから見ている人物がいた。

 それは、無事例の秘密階層に帰り、レージェルら3人の"様子見"という命令をうけ、きていたキャロルだった。

 だが、ここまで非人道的な破壊や殺戮を繰り返す彼等のやり方を、ただ見ているだけという命令を下したファントム。

 そして逃げる者などお構いなしに暴れまわる彼等の真意を、キャロルは理解することができなかった。

 今、レーシェルは新たな獲物に『デヴァイス・ブレイス』の砲身を向けた。

 また、彼等によって、何の関係もない人が死ぬ。

 なにか、自分にできることはないのだろうか。

 何か・・・そう思ったとき、すでにキャロルは弓に手をかけていた。


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